2010-01-01から1年間の記事一覧

富士の高嶺

妹が名も わが名も立たば 惜しみこそ 富士の高嶺の 燃えつつ渡れ 或る歌に曰はく 君が名も わが名も立たば 惜しみこそ 不盡の高嶺の 燃えつつも居れ万葉集 巻11−2697 貴女の名も私の名も世間の噂に立っては惜しいからこそ 富士の高嶺のように燃えつつ…

秋山

一年(ひととせ)に ふたたび行かぬ 秋山を 情(こころ)に飽かず 過(すぐ)しつるかも 万葉集 巻10−2218 一年に二度はめぐって来ない美しい秋山の景色を、心行くまで楽しむことなく過ごしてしまいました。 ☆ ☆ ☆ 16日に箱根の紅葉を楽しんで参りま…

山菅・やますが(ヤブラン)

咲く花は 移ろふ時あり あしひきの 山菅(やますが)の根し 長くはありけり 大伴家持 万葉集 巻20−4484 美しく咲く花はいつか散る時がある。 山菅の根こそ長く生き続けることだ。 ☆ ☆ ☆ 神武寺薬師堂 神武寺 なんじゃもんじゃの木 20年ぶりに三浦半…

八尺の堰塞・やさかのゐで

伊香保ろの 八尺(やさか)の堰塞(ゐで)に 立つ虹(のじ)の 顕(あらは)ろまでも さ寝(ね)をさ寝(ね)てば 万葉集 巻14−3414 伊香保の高い堰(せき)に立つ虹のように、はっきり人目につくほどに、一緒に寝ていられたらどんなに楽しいだろう。 *八尺の堰塞…

伊香保の沼 (榛名湖)

上野野(かみつけの) 伊香保の沼に 植ゑ子水葱(こなぎ) かく恋ひむとや 種求めけむ 万葉集 巻14−3415 伊香保の沼に植えるコナギではないけれど、こんなに恋い焦がれようと思って (恋の悩みの)種を求めたのだろうか *子水葱はミズアオイ科の一年…

韓藍・からあゐ (ケイトウ)

わが屋戸(やど)に 韓藍(からあゐ)植え生(おほ)し 枯れぬれど 懲りずてまたも 蒔かむとそ思ふ 山部赤人 万葉集 巻3−384 家の庭に韓藍(ケイトウ)を植え育てて枯れてしまったけれど、懲りずにまた種を蒔こうと思います。 ☆ ☆ ☆ ようやく訪れた秋の…

牛  心の著く所無き歌 (意味不明な歌)

我妹子が 額(ぬか)に生(お)ひたる 双六の 牡牛(ことひのうし)の 鞍の上の瘡 (かさ) 安倍子祖父(あべのこおぢ) 万葉集 巻16−3838 妻の額に生えている双六の、大きな牡牛の鞍の上のできもの・・?!☆×○※△□?・・ *ある時、舎人親王(とねりの…

日の暮れ

あかねさす 日の暮れぬれば すべを無(な)み 千遍(ちたび)嘆きて 恋ひつつぞ居る 万葉集 巻12−2901 日が暮れて行くとどうしようもなくて、何度もため息をついてあなたを恋しく思っています。 上の写真三枚は、ボーデン湖の向うの山に沈む夕日です。…

水の音

奥山の 木の葉隠れて 行く水の 音聞きしより 常忘らえず 万葉集 巻11−2711 奥山の木の葉隠れに流れる水の音を聞くように、あなたの噂話を聞いてから いつも忘れることができません。 *噂話を流れる水の音に譬えています。 ☆ ☆ ☆ 7月の猛暑に耐えかね…

蓮・はちす (ハス)

ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉(はちすは)に 溜まれる水の 玉に似たる見む 万葉集 巻16−3837 雨が降らないかなぁ。蓮の葉に溜まった水が、玉のようになるのを見たいものです。 * 歌を詠むのが上手な右兵衛府の官人がおりました。 ある時、右兵衛府で…

楝・あふち (栴檀・せんだん)

珠に貫(ぬ)く 楝(あふち)を家に 植ゑたらば 山霍公鳥(やまほととぎす) 離(か)れず来むかも 大伴宿禰書持(ふみもち) 万葉集 巻17ー3910 玉に貫く『あふち』を家に植えたら山ホトトギスはいつも来るでしょうか。 * 大伴書持さんが兄家持さん…

苗代水

言出(ことで)しは 誰(た)が言(こと)なるか 小山田(おやまだ)の 苗代水(なはしろみづ)の 中淀(なかよど)にして 紀女郎 万葉集 巻4ー776 先に言い出されたのはどなたでしょう(あなたなのに) (今は)苗代水のように中途で淀んでしまって(訪…

雉・きぎし(きじ)

春の野に あさる雉(きぎし)の 妻恋(つまごひ)に 己(おの)があたりを 人に知れつつ 大伴家持 万葉集 巻8−1446 春の野で餌をあさる雉が妻を恋して鳴く声で、自分の居る所を人に知られています。 GWの一日、葉山の棚田まで散歩にでかけた時のお話…

霍公鳥(ほととぎす) 来鳴き響(とよも)す 岡辺なる 藤波見には 君は来じとや 万葉集 巻10−1991 ホトトギスが来て鳴きたてているこの丘の藤の花を、あなたは見に来ないお積りでしょうか。 ☆ ☆ ☆ 近所の崖にタップリと垂れ下がって咲いていた藤の花も…

白鷺

池神(いけがみ)の 力士舞(りきしまひ)かも 白鷺の 桙(ほこ)啄(く)ひ持ちて 飛び渡るらむ 長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ) 万葉集 巻16−3831 池神の力士舞なのでしょうか。白鷺が小枝をくわえて飛んでいきます。 * 『池神』とは地名らし…

青柳の 糸の細(くは)しさ 春風に 乱れぬい間に 見せむ子もがも 万葉集 巻10ー1851 青柳の糸のこまやかなこと。春風に乱れてしまわないうちに見せる子がいたらなぁ。 柳は中国原産ですが我が国への渡来は古く、万葉集にも数多く詠まれており、集中『…

春雨

春雨は 甚(いた)くな降りそ 桜花 いまだ見なくに 散らまく惜しも 万葉集 巻10ー1870 春雨よ、激しく降らないで。まだ桜の花を見ていないのに散ってしまうのは惜しいから。 ☆ ☆ ☆ 今日は冷たい花散らしの雨になりました。夜になって風が強く春の嵐の…

今日の為と 思ひて標(し)めし あしひきの 峰(を)の上(へ)の桜 かく咲きにけり 大伴家持 万葉集 巻19−4151 今日の宴のためにと標(しるし)をしておいた峰の桜が、こんなに美しく咲きました。 3月の末に、伊豆の畑毛温泉で湯浴みと散策を楽しん…

馬酔木・あしび(あせび)

春山の 馬酔木の花の 憎からぬ 君にはしゑや 寄さゆともよし 万葉集 巻10−1926 春山のあしびの花のように心をひかれるあなたとならば、ええ、噂を立てられても構いません。 我が家の手入れの行き届かない(と云うよりホッタラカシ)の庭の馬酔木が咲き…

三枝・さきくさ (三椏・ミツマタ)

春されば まづ三枝(さきくさ)の 幸(さき)くあらば 後にも逢はむ な恋ひそ吾妹(わぎも) 柿本人麻呂歌集 巻10 1895 春が来ると先ず咲く三枝の花のように、幸せ(無事)であればいつかきっと逢えるでしょう。 恋い焦がれて苦しまないで、いとしい人…

鴛鴦・をしどり(おしどり)

磯の浦に 常喚(つねよ)び来棲(す)む 鴛鴦(をしどり)の 惜しき吾が身は 君がまにまに 大原今城真人(おおはらのいまきのまひと) 万葉集 巻20−4505 池の岩蔭でいつも呼び交わしながら住むオシドリの名のように惜しい我が身ですが あなたのお心に…

霞立つ 野の上(へ)の方(かた)に 行きしかば 鴬鳴きつ 春になるらし 丹比真人乙麻呂(たぢひのまひとおとまろ) 万葉集 巻8ー1443 霞のたつ野の上の方に行ってみたら、鶯が鳴きました。春になるらしいです。 * * * 三浦半島でも、ようやく本格的…

夜を寒み 朝戸を開き 出で見れば 庭もはだらに み雪降りたり 万葉集巻10−2318 昨夜寒かったと思って朝戸を開けて出てみると これはまぁ 庭にはらはらと雪が散り積っています。 * * * 今朝パラパラと雪が降りました。今日は少し積るのかしら〜と思っ…

苔・こけ

結へる紐 解かむ日遠み 敷栲(しきたへ)の わが木枕(こまくら)は 蘿(こけ)生(む)しにけり 万葉集 巻11−2630 あの人が結んでくれたこの紐を解くのは遠い先なので 私の木の枕には苔が生えてしまいました *古代、男女が旅などで別れ別れになる時…

笹・ささ

馬来田(うまぐた)の 嶺(ね)ろの篠葉(ささは)の 露霜の 濡れてわ来なば 汝(な)は恋ふばそも 万葉集 巻14−3382 歌の大意 その1 馬来田の山の笹の葉が露霜に濡れているように 濡れて私がやって来たのは あなたをを恋しく思うからです その2 馬…

山橘・やまたちばな(ヤブコウジ)

消(け)残りの 雪に合(あ)へ照る あしひきの 山橘を 裹(つと)に摘み来な 大伴家持 万葉集 巻20−4471 消え残りの雪に照り映える山橘の実を土産に摘んで来よう。 たまに散歩する道の大きなアカガシの木の根元に、艶々とした小さな赤い実を見つけま…

十二月(しはす)には 沫雪(あわゆき)降ると 知らねかも 梅の花咲く 含(ふふ)めらずして 紀少鹿女郎(きのおしかのいらつめ) 万葉集 巻8−1648 12月には淡雪が降ると知らないからでしょうか、梅の花が咲いています。蕾のままでいないで。 寒に入…

朝日

朝日影 にほへる山に 照る月の 飽かざる君を 山越しに置きて 田部忌寸櫟子(たべのいみきいちいこ)万葉集 巻4ー495 朝日の光がさしそめた山のあたりに残っている月のように 見あきることのないあなたを山の向こうに置いてきて・・・(心もとない気持で…

あらたまの年のはじめ

あけましておめでとうございます 2010年 元旦