2014-01-01から1年間の記事一覧

やぶそば

先日、京橋まで出かけた序に野次馬根性を発揮して、再建開店した神田の藪蕎麦に行ってみました。 行列は避けたいので昼食時をずらし、「三時のおやつ」の頃合いに入りましたが、店内はほぼ満席。 「いらっしゃいまし〜」と空いていた小さな四角いテーブル席…

建長寺

鐘つけば 銀杏ちるなり 建長寺 漱石 二ヵ月ほど前の新聞のコラムで、夏目漱石の「鐘つけば・・」の一句が紹介されました。 かの、余りにも有名な正岡子規の 柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺 は、この漱石の句を踏まえて詠んだもの という内容でした。 へぇ〜〜…

紅葉 (もみち)

妹がりと 馬に鞍置きて 生駒山 うち越え來れば 紅葉散りつつ 万葉集 巻10−2201 妹許跡 馬鞍置而 射駒山 撃越來者 紅葉散筒 妻の許へ行こうと馬に鞍を置いて生駒山を越えて来ると、紅葉がしきりに散っています。 生駒山 (一月の景色) 万葉集には百首…

黄葉 (もみちば)

あしひきの 山の黄葉(もみちば) 今夜(こよひ)もか 浮かびゆくらむ 山川の瀬に 万葉集 巻8−1587 大伴宿禰書持(おおとものすくねふみもち) 山のもみじは、今夜も浮かんで流れて行くのでしょうか、山川の瀬を。 流れる川の水面に滲む紅色が見られる…

潮早み 磯廻(いそみ)に居れば 漁(あさり)する 海人とや見らむ 旅行くわれを 万葉集 巻7ー1234 潮の流れが早いので、磯辺にいると漁をする海人と人々が見るだろうか、旅をしている私を。 城ケ島のハチジョウススキを見ての帰りは磯に下りました。 歩…

八丈薄 (ハチジョウススキ)

秋の野の 草花(をばな)が末(うれ)を 押しなべて 来(こ)しくもしるく 逢へる君かも 万葉集 巻8ー1577 阿倍朝臣蟲麿 秋の野のススキの穂先を押し伏せてやって来た甲斐があって、お会いできたあなたです。 散歩がてら、城ケ島のススキを見に出かけま…

蓼 (たで)

小児(わらわ)ども 草はな刈りそ 八穂蓼(やほたで)を 穂積の朝臣(あそ)が 腋くさを刈れ 万葉集 巻16−3842 平群朝臣 草刈りの子らよ。そこの草は刈らなくていいから、あの穂積の朝臣の臭い腋毛を刈りなさい。 * 平群朝臣が穂積朝臣をからかった歌…

秋の七草

山上臣憶良の、秋の野の花を詠む二首 秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数ふれば 七種の花 万葉集 巻8ー1537 春日大社北参道に建つ「秋の七種」万葉歌碑 萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝貌(あさがほ)の花 万葉集 巻8−1…

三輪山

狭井川の流れ近くに建つ歌碑 三輪山を しかも隠すか 雲だにも 心あらなも 隠さふべしや 万葉集 巻1−18 額田王 なつかしい三輪山を、そのように隠すのですか。 せめて雲だけでも思いやりがあって欲しい、あんなにも隠すなどあってよいものでしょうか。 都…

十六夜の月

山の末(は)に いさよふ月を 何時( いつ)とかも わが待ち居らむ 夜は深(ふ)けにつつ 万葉集 巻7ー1084 山の端でためらっている月を、 いつ出てくるかと思って待っているうちに、夜は更けて行きます。 今年の十六夜は9月9日 望の月、それもスーパーム…

メハジキ (古名 つちはり)

わが屋前(やど)に 生(お)ふる土針(つちはり) 心ゆも 想はぬ人の 衣(きぬ)に摺(す)らゆな 万葉集 巻7−1338 わが家の庭先に咲いている土針(つちはり)よ。心から思ってもいない人の衣に染められてはなりませんよ。 (好きでもない人と一緒にな…

秋の雨

秋の雨に 濡れつつをれば 賤(いや)しけど 吾妹(わぎも)が屋戸し 思ほゆるかも 万葉集 巻8−1573 大伴利上(おほとものとしかみ) 秋の雨に濡れしおたれていると、粗末な家ではあるけれど、吾妹子の家が思われます。 きのう、東京湾方面から気味の悪い…

忘れ草 (萱草)

わすれ草 わが紐に付く 香具山の 故(ふ)りにし里を 忘れむがため 万葉集 巻3−334 帥(そつ)大伴卿(おほとものまへつきみ) 忘れ草を私の紐に付けます。香具山のあたりのあの懐かしい故郷を、ひとときでも忘れているために。 * 帥大伴卿とは、大宰府…

石走(いわばし)る 瀧もとどろに 鳴く蝉の 声をし聞けば 都し思ほゆ 万葉集 巻15−3617 大石蓑麿(おおいしのみのまろ) 岩の上を流れる滝の音が轟くばかりに鳴く蝉の声を聞くと、奈良の都が偲ばれます。 *天平8年6月、遣新羅使船が安芸の国(広島…

ぬばたま (ヒオウギの実)

天の河 瀬を早みかも ぬばたまの 夜は明けにつつ 逢はぬ彦星 万葉集 巻10ー2076 天の川の瀬の流れが速いからか、夜が明けてしまうのに、まだ織女と逢っていない彦星よ。 * ヒオウギ アヤメ科 葉が檜扇のように重なっている形から、この名がついた。 …

ニイニイゼミ

今朝、遠くでミンミンゼミの鳴く声を聞きました。 あぁ! 今年の初ミンミンだわ♪ そして昼過ぎ、裏で「ジ・・・ジ・・・」という音がするので 蝉の発声練習かな? 蜩だといいな、と期待しつつ出てみますと いました!! 小さな蝉。 ツレが申しますには、ニイ…

ひるがお (古名 かほばな)

美夜自呂(みやじろ)の 砂丘辺(すかへ)に立てる 貌(かほ)が花 な咲き出でそね 隠(こ)めて偲はむ 万葉集 巻14−3575 みやじろの海岸の砂丘に咲き立つ「かほばな」のように、人目につくようには咲かないで。秘かに想っていたいから。 *美夜自呂は…

ささゆり

あぶら火の 光に見ゆる わが蘰(かづら) さ百合の花の 笑(ゑ)まはしきかも 大伴家持 万葉集 巻18-4086 油火の光に映えて見える私の蘰(かづら)の百合の花が美しく、なんと微笑ましいことでしょう。 天平感寶元年(749年)五月九日、秦伊美吉石竹 (はたのい…

多摩川

多摩川に 曝(さら)す手作り さらさらに 何そこの児の ここだ愛(かな)しき 万葉集 巻14ー3373 (東歌) 多摩川に晒す手作りの布がサラサラと流れるように、さらにさらにどうしてこの娘(こ)がこんなにも可愛いのだろう。 古代、多摩川の流域では手…

入梅

斯(か)くばかり 雨の降らくに 霍公鳥(ほととぎす) 卯の花山に なほか鳴くらむ 万葉集 巻10−1963 これほど雨が降るのに、ホトトギスは卯の花の咲く山で、なおも鳴いているのだろうか。 気象庁は今日、関東地方も梅雨入りしたと発表しました。 驚く…

石田の杜 (いはたのもり)

山科の 石田(いはた)の小野の 柞原(ははそはら) 見つつか君が 山道(やまじ)越ゆらむ 藤原宇合 万葉集 巻9-1730 山科の石田の野の柞(ははそ)の原を見ながら、あなたは今ごろ山道を越えて行くのでしょうか。 *柞(ははそ)は、コナラ、クヌギ、ミズナ…

春日野

春日野の 浅茅(あさぢ)が上に 思ふどち 遊ぶこの日は 忘らえめやも 万葉集 巻10−1880 春日野の浅茅の上で仲よしたちが遊ぶこの日は忘れられないでしょう。 *春日野とは、現在「奈良公園」と呼ばれる一帯のことだそうです。 * * * 昨年、興福寺南…

春山の霧

強羅で 春山の 霧に惑へる 鴬も 我れにまさりて 物思(も)はめやも 万葉集 巻10ー1892 (柿本人麻呂歌集) 春山の霧に惑う鶯も、今の私にまして物思いすることはないでしょう。 お天気悪い日に、また箱根に出かけました。 染井吉野はさすがに散ってし…

月出帯食

四月十五日は望の日で、月の出のとき、満月が部分的に欠けた状態で昇ってくるらしい、と夫が言うので それは珍しいから必ず見ようと心積もりしたものの、いざその時刻になると夕餉の支度に気をとられ 見ることを忘れてしまいました。 月の出時刻を30分も過…

小さな折り鶴で

箱根 宮ノ下に泊まるとよく食べに行くお寿司屋のご主人の作品です。 1〜2センチ角に切った色紙で折った小さな鶴で丹念に仕上げられています。 小ぶりなお店で狭く、相客に迷惑だといけませんから、いつもは鑑賞するばかりでしたが 偶々この時は私共だけで…

山にも野にも

冬ごもり 春さり来れば あしひきの 山にも野にも 鴬(うぐひす)鳴くも 万葉集 巻10−1824 春になったので、山にも野にも鴬が鳴いています。 23日の朝、家にいて、鶯の鳴く声を近くに聞きました。今年はこれが初めてです。 例年ですと2月末にはケキ…

梅に月

ひさかたの 月夜(つくよ)を清み 梅の花 心開けて わが思(も)へる君 紀少鹿女郎(きのをしかのいらつめ) 万葉集 巻8ー1661 夜の月がきれいなので梅の花が開くように、私も心を開いてあなたをお慕いしています。 * * * おととい、穏やかな春の日差…

ゆどうふ

いつまでも寒い日が続きますので、ほっこり『ゆどうふ』のお話を。 奈良を訪ねた帰りに京都に寄って、二年坂の「奥丹」のお豆腐を食べに行きました。 玄関から渡り廊下を通って席に案内されます チラチラと小雪が舞うお庭を眺めながら味わうお豆腐は格別〜♪ …

唐招提寺

おほてら の まろき はしら の つきかげ を つち に ふみ つつ もの を こそ おもへ (大寺のまろき柱の月影を土に踏みつつものをこそ思へ) 会津八一 会津八一歌碑 金堂側面 南大門から写したウメモドキの実と金堂 唐招提寺は私の気に入りのお寺の一つで、…

今日は吹雪

わが背子と 二人見ませば 幾許(いくばく)か この降る雪の 嬉しからまし 藤皇后(光明皇后) 万葉集 巻8−1658 あなたと二人で見られたなら、どれほどこの降る雪が嬉しく感じられることでしょう。 *光明皇后が聖武天皇に奉った一首です。 この歌の歌碑…