万葉集巻五 梅花の歌32首、員外2首、追加4首

 

815 正月(むつき)立ち春の來(きた)らば斯(か)くしこそ梅を招(を)きつつ樂しき終へめ  大貳紀卿

816 梅の花今咲ける如(ごと)散り過ぎずわが家(へ)の園(その)にありこせぬかも  小貳小野大夫

817 梅の花咲きたる園の青柳(あおやぎ)は蘰(かづら)にすべく成りにけらずや  小貳粟田大夫 
      
818 春さればまづ咲く宿の梅の花獨り見つつや春日暮(くら)さむ  筑前守山上大夫

819 世の中は戀繁しゑや斯くしあらば梅の花にも成らましものを  豊後守大伴大夫

820 梅の花今盛りなり思ふどち插頭(かざし)にしてな今盛りなり  筑後守葛井大夫

821 青柳(あおやなぎ)梅との花を折りかざし飲みての後は散りぬともよし  笠沙彌

822 わが園に梅の花散るひさかたの天(あめ)より雪の流れ來(く)るかも   主人

823 梅の花散らくは何處(いづく)しかすがに此の城(き)の山に雪は降りつつ  大監伴氏百代

824 梅の花散らまく惜しみわが園の竹の林に鶯鳴くも  小監阿氏奥島(おきしま)

825 梅の花咲きたる園の青柳を蘰(かづら)にしつつ遊び暮らさな  小監土氏百村(ももむら)

826 うち靡(なび)く春の柳とわが宿の梅の花とを如何にか分かむ  大典史氏大原

827 春されば木末(こぬれ)隠れて鶯そ鳴きて去(い)ぬなる梅が下枝(しづえ)に  小典山氏若麿

828 人毎(ひとごと)に折り插頭(かざ)しつつ遊べどもいやめづらしき梅の花かも  大判事丹氏麿

829 梅の花咲きて散りなば櫻花繼ぎて咲くべくなりにてあらずや  藥師張氏福子

830 萬代に年は來經(ふ)とも梅の花絶ゆることなく咲き渡るべし  筑前介佐氏子首(こびと)

831 春なれば宜(うべ)も咲きたる梅の花君を思ふと夜眠(よい)も寢なくに  壹岐守板氏安麿

832 梅の花折りてかざせる諸人(もろひと)は今日の間は樂しくあるべし  神司(かむづかさ)荒氏稻布(いなしき)

833 毎年(としのは)に春の來たらば斯くしこそ梅を插頭(かざ)して楽しく飲まめ  大令史(だいりょうし)野氏宿奈麿

834 梅の花今盛りなり百鳥の聲の戀(こほ)しき春來たるらし  小令史田氏肥人

835 春さらば逢はむと思(も)いし梅の花今日の遊びにあひ見つるかも  藥師高氏義通 

836 梅の花手折り插頭(かざ)して遊べども飽き足らぬ日は今日にしありけり  陰陽師磯氏法麿

837 春の野に鳴くや鶯懐けむとわが家(へ)の園に梅が花咲く  筭師志氏大道

838 梅の花散り亂(まが)ひたる岡傍(び)には鶯鳴くも春方設(ま)けて  大隅目榎氏鉢麿

839 春の野に霧立ち渡り降る雪と人の見るまで梅の花散る  筑前目田氏眞

840 春柳蘰(かづら)に折りし梅の花誰(たれ)か浮かべし酒坏(さかづき)の上(へ)に  壹岐目村氏彼方(おちかた)

841 鶯の聲(おと)聞くなべに梅の花吾家(わぎへ)の園に咲きて散る見ゆ  對馬目高氏老(おゆ)

842 わが宿の梅の下枝(しづえ)に遊びつつ鶯鳴くも散らまく惜しみ  薩摩目高氏海人(あま)

843 梅の花折り插頭(かざ)しつつ諸人の遊ぶを見れば都しぞ思(も)ふ  土師(はに)氏御道(みみち)

844 妹が家(へ)に雪かも降ると見るまでにここだも亂(まが)ふ梅の花かも  小野氏國堅

845 鶯の待ちかてにせし梅が花散らずありこそ思ふ子が爲  筑前掾門氏石足(いそたり)

846 霞立つ長き春日を插頭(かざ)せれどいや懐かしき梅の花かも  小野氏淡理

 

      員外、故郷を思ふ歌兩首

847 わが盛りいたく降(くた)ちぬ雲に飛ぶ藥はむともまた變若(を)ちめやも

848 雲に飛ぶ藥はむよは都見ばいやしき吾が身また變若(を)ちぬべし

 

      後に追いて梅の歌に和(こた)ふる四首

849 残りたる雪にまじれる梅の花早くな散りそ雪は消(け)ぬとも

850 雪の色を奪いて咲ける梅の花今盛りなり見む人もがも

851 わが宿に盛りに咲ける梅の花散るべくなりぬ見む人もがも

852 梅の花夢(いめ)に語らく風流(みや)びたる花と我(あれ)思(も)う酒に浮べこそ

 

 

 

令和記念シウマイ御弁當