ささゆり




あぶら火の 光に見ゆる わが蘰(かづら)  さ百合の花の 笑(ゑ)まはしきかも
 


  大伴家持  万葉集 巻18-4086



油火の光に映えて見える私の蘰(かづら)の百合の花が美しく、なんと微笑ましいことでしょう。




天平感寶元年(749年)五月九日、秦伊美吉石竹 (はたのいみきいはたけ)の館で 越中国司の役人たちが飲み会をしました。
その際、主人の石竹さんは、百合の花蘰 (はなかづら、髪飾り) を三ひら造って豆器 (づき、食物などを盛る木製の高坏のような器) に畳ね置き、賓客に贈ったということです。そして各々がこの花蘰を題にして歌を詠みました。
今日の歌はその中の一首、大伴家持さんの歌です。
←左は昨年の葵祭の写真で、冠に葵の葉を飾っていますが、家持さん達も、こんな感じにササユリを髪に飾って酒宴を楽しんだのかもしれません。




南伊豆と云ってもずっと西寄りの、下田から行くとバスで一時間もかけて里を過ぎ峠を越え、漸く開けた所に『天神原植物園 ササユリの里』があります。
このあたり一帯には元々ササユリが自生していたのですが、林の手入れが疎かになると樹木の葉が茂り日が当たらなくなって、ササユリは減少てしまったそうです。その後この植物園のご主人が一念発起、種を採って育て、難しいといわれる栽培に成功し、今では三万球もの群生地になりました。種を蒔いてから開花まで七年もかかる、とのお話でした。
数年来、ここのササユリを見たいと思っていたのですが、バスの便は日中は二本のみ。これでは余りにも交通の便が悪く、ちょっとねぇ・・・車じゃないとぉ・・・
今年も行かれそうにないかな、と考えていた折りも折、「南伊豆の格安宿泊情報」が飛び込んできて、天気もどうやら梅雨の中休み。行くなら今でしょ!とばかり急遽お出かけ、と相成りました。
まだ蕾が多いかな、ちょっと来るのが早かったかな。
箱根湿生花園に咲く笹百合は白っぽく、俯き加減で控え目に楚々と咲くイメージでしたが、天神原のはスックと顔をお日様に向け、何とも艶やかに咲いているのもありました。
山百合ほどの大輪の花も見られ、色も濃いのや白いのや、各々が個性を主張しているようです。
園長夫人のお話では、今年は生育期に雨が少なかったせいで全体に小さい、とのことでした。
そうなのぉ〜 私はこんなに大きいササユリは初めて見たのですけど。
秋には女郎花や吾亦紅が咲き競い綺麗ですから、是非またいらして下さいね、と仰ってました。




白から濃いピンクまで花色さまざま


白も微妙に違っています。







クガイソウと一緒に


遠いところをようこそ、とご馳走して下さった伊豆特産の寒天。ヒンヤリ美味しかったです。
 


岩桐草 (イワギリソウ) 関東地方では自生しないイワタバコ科の山野草


ヤマアジサイも見頃でした。