小水葱 (コナギ)



苗代(なはしろ)の 小水葱(こなぎ)が花を 衣(きぬ)に摺(す)り 
  馴(な)るるまにまに 何(あぜ)か愛(かな)しけ                             


                万葉集 巻14−3576



     苗代のコナギの花で摺り染めにした衣がだんだん着馴れてくるように
     あの娘(こ)も馴れるにつれてどうしてこう愛(いと)しいのだろう。





小水葱(コナギ)は水田や沼に自生するミズアオイ科の一年草で、昔は食用、薬用として栽培されていたようです。
花は染料に使われました。
水田に繁茂すると稲が生育不良になるため嫌われる水草ですが、青紫色の花は根元近くで密やかに咲き、可憐です。


長い間、私は理由もなくミズアオイとコナギは同じ草だと思い込んていました。
ところが春日大社の万葉植物園で二つの花が並べて展示されているのを見て、そうだったのね! とその違いをようやく知りました。
ミズアオイは古名が水葱(ナギ)。同じ仲間の小型のナギが小水葱(コナギ)。なるほど〜♪


今月上旬に伊豆の畑毛温泉の田んぼ道を散歩していた時、やや荒れた田の中に、ハート形をした葉の水草が蔓延っているのを見つけました。あれ、コナギじゃないの?
近寄って目を凝らすと、小さくて清楚な青紫の花が控え目に咲いています。やった! 自生してるの初めて見た!
一枚目と二枚目の写真がその時写したものです。


ミズアオイは九月ごろ箱根湿生花園の池沼で花を観賞できます。絶滅危惧種に指定されているそうで・・・





  左がナギ(ミズアオイ)   右がコナギ  葉の大きさも草丈も花の咲き方も違いますね。

 



葉に隠れるようにひっそりと咲く、ちょっと恥ずかしがり屋さんのコナギ


ミズアオイは伸びやかに茎をたて、清楚な中にも艶やかさを感じさせる薄紫色の花です。


おまけに  伊豆特産、黒米の稔り。  富士山は雲隠れ。