時ごとに いや珍しく 咲く花を 折りも折らずも 見らくし好しも

                  
                   大伴家持 万葉集 巻19ー4167



季節ごとにいよいよ珍しく咲く花を、手折っても手折らなくても,眺めているのは好いものです。



蝦夷延胡索(エゾエンゴサク)と蝦夷山桜(エゾヤマザクラ)が見たくて、格安の登別温泉滞在ツアーに参加しました。
先ずエゾエンゴサクを見つけようと、温泉地の林の中に設けられた遊歩道を歩き廻ったのですが出会えませんので、ボランティアガイドさんが常駐する観光案内所で尋ねますと、運よく山野草に詳しい方がいらして『白老(しらおい)のポロト湖なら必ず咲いています』と教えて下さいました。

いざ!ポロト湖へ! 道南バスとJR室蘭本線の電車を乗り継いで白老下車。徒歩10分程で湖畔に着きました。周囲4km位の細長い小さな湖で、アイヌ民族博物館など、観光施設がありましたが、今回は割愛。目指すはエゾエンゴサク! 気持のよいサイクリングロードをブラブラ、きょろきょろしながら約2.8km歩いた辺りの林の中に、鮮やかな空色の花がひっそりと咲いているのでした。
途中すれ違った散歩中のご夫妻に『どこかでエゾエンゴサクをご覧になりませんでしたか?』と聞いてみたのですが、『さ〜ぁ? 見なかったですねぇ』とのお返事で、半ば諦めかけたところでしたので、大感激してカメラに収めました。時に白やピンクなどの花色もあるそうですが、ここには清々しい青色ばかり、樹々の下に点々と咲いておりました。


ポロト湖
 




エゾヤマザクラ


エゾヤマザクラはあちらこちらで霞のように咲いておりましたが、もう盛りは過ぎたようでした。
冷たい雨が降った日、日帰り入浴に出掛けたオロフレ山麓カルルス温泉にも、エゾヤマザクラが沢山咲いているのが見られ、大ぶりの、ほのかに紅をさした花が雨に濡れ、可憐な風情でした。
蛇足ながら、このカルルス温泉は、チェコのカルルスバード(ドイツ語。チェコ語でカルロヴィ・ヴァリ)の温泉と似た泉質であることに因んで、カルルスと名付けられたのだそうです。
「保健所の認可がまだなので飲めません」と張り紙がありましたが、こっそり飲んでみますと、無味無臭で飲み易い温泉でした。カルロヴィ・ヴァリの温泉は成分が濃くて味が強く、とても一度には飲めませんでしたから、こちらの温泉に含まれる成分は薄いのでしょう。肌触りの良い優しいお湯です。




登別川上流(千歳川)の桜