わが門(かど)の 片山椿(かたやまつばき) まこと汝(な)れ わが手触れなな 土に落ちもかも
わが家の門に咲く片山椿よ、お前は私の手が触れないのに土に落ちてしまうのだろうか。
*この歌は、椿を女性にたとえ、留守の間に恋人が他の男のもになってしまわないかと心配している防人(さきもり)の歌です。
作者の物部広足は、武蔵国荏原郡(現在の東京都品川、大田、目黒、世田谷の辺り)の人で、天平勝寶七年(755年)二月に防人として筑紫国に赴きました。東京から福岡まで、今なら飛行機であっという間ですが、万葉の時代には、どんなに遠く思われたことでしょう。
万葉集に詠まれている椿といえば自生種のヤブツバキのことですが、現在、園芸種には、沢山の品種があり、素人には見分けるのがとても難しいです。牡丹やバラのように咲いたり、同じような色合いでも微妙に違っていて、風雅な名をひとつひとつ確認しながら観賞するのも楽しいものです。
横須賀の「くりはま花の国」へ散歩に出かけた折に、色々写して参りました。お気が向きましたらどうぞご覧下さいませ。
『糊こぼし』 東大寺二月堂のお水取りに因んだ椿のお菓子です。