つがの木・栂


                     撮影場所 大船フラワーセンター


三諸(みもろ)の 神名備(かむなび)山に 五百枝(いほえ)さし 繁(しじ)に生ひたる つがの木の いや継ぎ継ぎに 玉かづら 絶ゆることなく ありつつも 止まず通はむ 明日香(あすか)の 奮(ふる)き京師(みやこ)は 山高み 河(かわ)雄大(とほしろ)し 春の日は 山し見がほし 秋の夜は 河し清(さやけ)し 朝雲(あさくも)に 鶴(たづ)は亂(みだ)れ 夕霧に 河蝦(かはづ)はさわく 見るごとに 哭(ね)のみし泣かゆ 古(いにしへ)思へば

                      山部赤人 万葉集 巻3−324



三諸の神奈備山に、沢山の枝が繁って伸びている栂の木のように、次々に絶えることなく、常にに通いたいと思う明日香の古い都は、山は高く、明日香川は雄大に流れ、春の日は山が美しく、秋の夜は川の音がさわやかで、朝雲に鶴は乱れ舞い、夕霧の中で蛙がしきりに鳴いている。それを見るたびに涙があふれる。過ぎ去った昔のことを思うと。