天の香具山 (あまのかぐやま)

 




 春過ぎて 夏来(きた)るらし 白栲(しろたへ)の 衣乾(ころもほ)したり 天の香具山


                            持統天皇 万葉集 巻1−28




       春が過ぎて夏が来たようです。真っ白な衣が乾してあります、天の香具山に。




大極殿と朝堂院を区切る閤門(こうもん)跡を示す赤い列柱越しに見る香具山




5月17日。当初、この日は吉野川沿いに、宮滝、菜摘、国栖方面を観光する心算でしたが、調べたところ、国栖への路線バスが廃止になり、代替の町営バスは走っていても観光には不便そうです。タクシーで廻ろうかとも考えましたが、歩き回っている間、運転手さんに待っていて貰うのも気が落ち着かないからと東吉野行きを中止し、急遽、藤原宮跡を訪ねることにしました。

橿原神宮駅近くの宿から剣池→元薬師寺跡→朱雀大路跡→藤原宮跡→小房観音→橿原神宮久米寺→ホテル。

久々に二万歩を越えるほど歩きました。年寄りの冷や水 (^_^;)
遥か昔ここを訪ねた頃、こんもりとした小さな森のような大極殿跡の周りは田んぼでしたが、今は発掘調査が進み、朝堂院や官衙等の建物群、藤原宮の大垣、門、濠などが確認されているそうで、建物跡を示す赤い柱がたくさん建っておりました。
遠くの一画では今日も発掘作業に励む人々の姿がありました。
藤原宮跡を歩いている間、ずっと香具山が見えています。以前ここに来た時は、大極殿跡の土壇に立ち、一面の田んぼを眺めて感慨に浸ったものの、ここから香具山を見たという記憶が全く無いので、へぇ〜香具山がこんなに近くに! と新鮮な感じで眺めたのでした。
持統天皇の時代、空気が澄んだ日は、香具山の辺りに乾してある白い衣がはっきり見えたのかもしれません。「山裾のどこかのお家で真っ白いシーツなど盛大に乾してくれないかな」などと虫の良いことを考えながらの散策でした。


閤門跡から。
左上のこんもり木が繁った所が藤原宮大極殿跡です。



大極殿跡の北にある醍醐池は内裏跡に造られた灌漑用の溜池で
この池がある為に、ここは発掘調査が進んでいないそうです。


醍醐池の畔に、犬養孝書の歌碑が草に埋もれるように建っておりました。


藤原宮跡で沢山見られた野草
ニワゼキショウ                             オオカワヂシャ
 


ニガナ                                  キツネアザミ 
 



こちらは明日香から見た香具山です。
持統天皇は何処からご覧になりながら天の香具山を詠まれたのでしょうね。