撮影場所 市川市万葉植物園
沽洗(陰暦三月)二日,掾大伴宿禰池主のなり
忽に芳音を辱(かたじけな)くし、翰苑(かんえん)雲を凌ぐ。兼て倭詩(うた)を垂れ、詞林錦を舒(の)ぶ。以て吟じ以て詠じ、能(よ)く戀緒を蠲(のぞ)く。春は楽しむ可(べ)し。暮春の風景、最も可怜(おもしろ)し。紅桃は灼灼(しゃくしゃく)にして、戯蝶(ぎちょう)花を回りて舞ひ、翠柳(すいりゅう)は依依(いい)にして、嬌鴬葉に隠りて歌ふ。楽しむべきかも。淡交に席を促(ちかづ)け、意を得て言を忘る。楽しきかも、美しきかも。幽襟賞(め)づるに足れり。豈慮(はか)らめや、蘭螵(けい)藂(くさむら)を隔て、琴樽(きんそん)用無く、空しく令節を過して、物色人を軽みせむとは。怨むる所此に有り、黙己(もだ)をること能はず。俗の語に云はく、藤を以て錦に續(つ)ぐと云へり。聊(いささ)かに談咲に擬(ぎ)すらくのみ。
山峡(やまかい)に 咲ける桜を ただひと目 君に見せてば 何をか思はむ
巻17−3967
鶯の 来鳴く山吹 うたがたも 君がて触れず 花散らめやも
巻17−3968
* これは大伴家持から来た手紙に対する大伴池主の返事です。
紫蘭とする説もあるようです
撮影場所 自宅