円覚寺 舎利殿



11月3日〜5日、宝物風入れで舎利殿が特別公開されましたので拝観して参りました。
鎌倉五山二位の円覚寺は、弘安五年(1282)の創建、開基は執権北条時宗、開山は無学祖元(仏光国師)です。
深い緑に包まれた円覚寺は、中世鎌倉の面影が強く感じられ、谷戸の奥行きのある広い寺域に総門、山門、佛殿、方丈が並び、十数もの禅寺らしい端正な塔頭など、多くの建物が見られ壮観ですが、実は数度の火災に見舞われ、関東大震災でも被災し、今ある建物は、室町から江戸時代、そして昭和に再建復元されたもので、創建当時の伽藍はひとつも残っていないということです。




舎利殿 国宝

円覚寺舎利殿には、仏牙舎利(ぶつげしゃり)と尊崇されるお釈迦様の歯牙をおまつりしております。
その由来は、将軍源実朝公が宋の時代、中国 能仁寺から請来したものです。この舎利殿は、鎌倉にあった大平寺(尼寺、廃寺)の佛殿(鎌倉時代末〜室町初期に再建)を移築したもので、中国、南宋時代の建築様式に学んだ禅宗様建築の代表的な遺構です。関東大震災に倒壊しましたが、昭和4年に復元しました。
内部の正面に佛舎利をおまつりする宮殿が安置され、その前に鎌倉彫の須弥壇があり、観音菩薩地蔵菩薩がまつられています。・・・

屋根は杮葺きで、軒先が反り上がってシャープな印象ですが、わが家にある土門拳さんの古い写真集を見ますと、裳階は杮葺ですが屋根は茅葺で、軒先の反りも左程ありません。現在の姿になる前は、如何にも鎌倉らしい鄙びた、素朴な外観の建物だったようです。
「繊細な波型の弓欄間やアーチ型の花頭窓、内部中央の鏡天井などが禅寺の特徴をよくあらわしている」と解説する音声が繰り返し流れておりました。



舎利殿







この階段を上ると弁天堂、見晴らしの良い茶店、鐘楼があります。



洪鐘(おおがね)  国宝 
正安三年(1301)鋳造。
鐘楼も撞木も相当傷んでいます。
除夜の鐘は撞けるのかな?






















サネカズラは綺麗な赤い実になりました。

さな蔓 (サネカズラ、美男蔓)




木綿裹(ゆふつつ)み 白月山の さな葛 後もかならず 逢はむとそ思ふ


    
或る本の歌に云はく、絶えむと妹をわが思はなくに


 万葉集 巻12−3073



(白月山のさな蔓のように)後にも必ずあなたと逢いたいと思います。


木綿裹み(一に云はく、畳)。
木綿裹は枕詞。木綿の包みは白いので白にかかる。
白月山は所在不明。
・・・さな蔓まで、逢ふを導く序。蔓は分かれてまた先で合う。






秋の長雨も小休止してピーカンの木曜日、久しぶりに鎌倉散歩に出かけました。
家を出るときは海蔵寺に行くつもりでしたが、駅の券売機の前で気が変わり、北鎌倉まで切符を購入。
今、観光の端境期で観光客も少なそうなので円覚寺を訪ねることにしました。6年ぶりです。
案の定人は少なく、写生をしている中学生のグループの他には、欧米系のお顔立ちの個人観光らしい方がチラホラ。
ゆっくりと境内を廻って、禅寺らしい静かで清々しい空気を感じられたでしょうか。


一番奥の塔頭、黄梅院のお庭の低い竹垣にサネカズラの実が赤く色づき始めていたので写しました。
日当たりの影響なのか、紫色の実もあって珍しく思いました。これから赤く変わっていくのかなぁ?




黄梅院 観音堂  






朽ちかけた小さな木仏。
十一面千手観音のようです。






帰り道、夕やみ迫る松の木に白い月



暮れかけた亀ヶ谷坂切通しを越え鎌倉まで歩き、遅くなったから食事をして帰ろう・・・
勝烈庵で「鎌倉五山定食」を食べました。
止せばいいのにカキフライ一つ追加して貰って綺麗に平らげ、翌日も胃もたれしてました。

散歩



ある日の午後、久里浜緑地に散歩に行かない?とツレが誘いますので出かけました。
JR久里浜駅から商店街を通り抜ける、いつものコースを歩いていてフト振り返ると一緒に歩いている筈の夫がいません。ありゃ、また迷子だ、と駅の方に戻ってみても姿なし。杖を頼りに下ばかり見て歩くので、多分、商店街の十字路を右に曲がるべきを、真っ直ぐ行ってしまったようです。
いま何処? とLINEを送っても、携帯電話しても応答なし。きっと見覚えのない道に出てしまってウロウロしてるんだわ。こうなったら仕方がない。絶対後戻りをしない人なので、人さまに道を尋ねながらでも何とか公園に辿り着くはず。
全くもう! とプリプリしながら私は先に公園に行って待つこと40分。コツコツ杖を鳴らし、何事もなかったかのようにシレ〜っと夫登場です。
谷戸の公園は日の暮れが早く、広い公園を廻っていると暗くなりそうなので、コスモス畑を一回りしただけで帰ってきたのでした。








 



ミゾソバ


臭木




今年の十五夜


三日後。 月齢 16.9

アサギマダラ



先日訪れた湿生花園の、春には水芭蕉が咲く林の中に一頭のアサギマダラを見ました。
この季節は此処まで入って来る人は少なく今は静かな場所で、もともと人に対する警戒心も余り持たない蝶らしく
ヒヨドリバナを移動しながらゆっくり吸蜜する姿を写すことができました。
あの、ステンドグラスのような翅の模様の浅葱色に光が当たると透き通るようで、見惚れてしまいます。


箱根でアサギマダラを見かけたのは二度目、最初は鎌倉古道「湯坂道」でやはり9月の中頃でした。
夏、駒ヶ岳頂上付近に沢山いる、と云う噂を聞いたことがあって、一度見に行こうと思いながらつい行かずじまいでしたが、
湯坂道で出会って、やっぱり箱根に来るんだアサギマダラ、と妙に感激したことでした。
近頃では、三浦半島でも鎌倉でも飛ぶ姿を見ることがありますから、箱根にいて当然ですけれども。


そう云えば過去、アサギマダラには幾度か出会っていますが、翅が傷んだ個体を見たことがありません。
長距離を渡りする蝶なのに何故いつも美しい翅を保っているのでしょう? 偶々なのでしょうか?














こちらはイチモンジチョウと思い写したのですが、何か違うな、と調べたらサカハチチョウのようです。初めて見ました。



アカバナ 
 


サクラタデ


アオフジバカマにイチモンジセセリ




アケボノソウ


秋の野で


9月に入っても暑い日が続き家に籠りがちでしたが、少しは歩かなければ、と先週、箱根湿生花園に出かけました。
宮ノ下辺りでは蒸し暑く、強羅はやや蒸すかな? 仙石原まで行きますと空気はサラリと爽やかな風が渡って通ります。
湿生花園の秋の花は、サギソウ、女郎花が終盤、ワレモコウ、アサマフウロ、サクラタデ、サワギキョウ、アケボノソウなどが見頃でした。
鮮やかな青のエゾリンドウもちらほら、向かいの台のススキの草原は白く輝いていましたから、穂が出揃ったのかもしれません。
そんな中に、万葉集に詠まれた草花も幾つか目に留まりましたので写してきました。
曼珠沙華、ススキは富士屋ホテルの庭で写したものです。、



うけら (おけら)   写真の花は「大花オケラ」で中国原産。日本に自生する朮(おけら)とは色も大きさも違いますね。

わが背子を何(あ)どかも言はむ武蔵野のうけらが花の時無きものを   巻14−3379



思ひ草 (なんばんぎせる)

道の邊の尾花が下の思ひ草今さらになど物か思はむ   巻10−2270



玉掃 タマバハキ (こうやぼうき)   これはナガバノコウヤボウキかも・・・?

玉掃刈り來(こ)鎌麿(かままろ)室(むろ)の樹と棗が本(もと)をかき掃かむため   巻16−3830



をみなへし (女郎花)

手に取れば袖さへにほふ女郎花この白露に散らまく惜しも   巻10−2115





この夕(ゆふべ)秋風吹きぬ白露にあらそふ萩の明日咲かむ見む   巻10−2102



撫子  ナデシコ

野邊見れば撫子の花咲きにけりわが待つ秋は近づくらしも   巻10−1972



壹師 イチシ  (彼岸花

路の邊の壹師(いちし)の花のいちしろく人皆知りぬわが戀妻を   巻11−2480

いちしろく :  顕著に、はっきりと、目立って  



尾花 (すすき)

わが屋戸の尾花おし靡(な)べ置く露に手觸れ吾妹子散らまくも見む   巻10−2172

湯治




5年ぶりに訪れた増富温泉は、ほんの少し寂しさが漂うように感じました。
住民の高齢化による過疎化が進んだのか人影まばら。何となく活気がない。常連の湯治客も減っているのでしょう。
お盆の間はさすがに満室との事でしたが、それが過ぎればお客さんも少ないようでした。
私共がいつも泊まる津金楼は増富温泉郷の一番奥。緑濃く、前を流れる本谷川の瀬音がBGMの
それは静かな環境に建つ規模は中くらいの宿です。
二階から四階に客室があり、エレベーターは無いので、階段をエッチラコと上り下りしなければなりません。
案内された三階の部屋の様子は昔の儘、古びた壁の傷も見覚えがあるような・・・笑
お茶を淹れて下さる従業員さんも見覚えあり。随分お久しぶりなんじゃありませんか〜と云われました。


食事は朝夕お部屋食。豪華ではないけれど、地場野菜中心の心尽くしの手料理が並びます。
だだ今回、ご飯の炊き方が硬すぎると思いました。年老いて咀嚼力が弱ったのかな。
胃腸の術後の方は困るだろうな。頼めばお粥など用意してくれるのかな。また行くことがあったら頼んでみましょう。


一日目の夕食後に床を延べてくれますが、その後は万年床のお部屋が多いです。
どうも、それが湯治場の仕来りのようでして。
従って部屋の掃除はマメには行われず二日おき位。潔癖症の向きには耐えられない住環境かも。
もちろん頼めば毎日の布団の上げ下ろし掃除はやってくれるのでしょうけど。


温泉(冷泉)は放射能泉でラジュウム含有量が多いことから、癌に効く、と云う評判ですが、その真偽はともかく
豊かな自然の醸す気のようなものは感じるので、ここで体に優しい食事や散策、効能ありげな温泉入浴で数日を過ごすうちに
生活リズムも整い、自ずと免疫力、治癒力が高まる、なんて事はあるのかもしれません。


ラジュウム泉は鎮静、鎮痛作用があるそうで、湯治客には杖を頼りの足腰の痛む高齢者が多いですが
お口はまだまだ達者なので、長湯のつれづれに身の上話やグチ話など、大声で語り笑いさざめく人たちがいて退屈しません。
薬代を払う積もりで毎月通う人。娘さんに看護師さん並みのお手当てを支給して付き添って貰う人。
お医者さんだという娘さんの真っ赤な車で送迎され、のんびり滞在する人。
ひたすら穏やかに助け合いながら入浴を楽しむ老姉妹。
大阪の生活事情や美味しい食べ物をあれこれ紹介してくれる人。名物?「いか焼き」がとても美味しいのだとか。
小さな空間にも様々な人生が垣間見えて面白いです。
そんな中に大学生風のお嬢さんのグループが静かに輪になって湯浴みする姿が可愛らしい。
それに引き替え、オバちゃんたちは騒がしいなぁ。
男湯はというと、誰も彼もだんまり作戦。じっと目を閉じ、し〜んと静まり返っているそうです。



津金楼




二酸化炭素 ナトリウム 塩化物 炭酸水素塩泉
湯口から流れ出る源泉は透明で、口に含むと塩分が強く鉄臭いです。
鉄分が空気に触れると酸化して湯は茶色に濁り
含まれる炭酸の成分がサワサワした柔らかな肌触りで、凝りがほぐれるような感覚があります。




朝食  湯治プランで出された食事5泊分。


夕食



温泉成分が堆積した石灰華




増富温泉バス停



日帰り入浴施設 「増富の湯」




この地方独特の信仰でしょうか。どっしりとした石の祠に丸い石が祀られています。



花豆の花




増富の野草



台風15号の前触れで、今日は朝から風雨が強く荒れた空模様です。


8月も今日でお終いだわ! と慌てて野の花の写真をまとめました。
何処でも見られる野草が多いですが、シデシャジンは此処でしか見たことがなく、
以前と変わらず同じ場所に見つけて嬉しく思いました。やや盛りを過ぎた状態でしたが。



オオバギボシ


ヤブカンゾウ


タマアジサイ


オモダカ


シシウド


シデシャジン




ガガイモ


カワラナデシコ


ムシトリナデシコ


クサノオウ


キノコ
 


シモツケ


キバナノヤマオダマキ


クロイチゴ


クロイチゴ


アカソ


ヤマユリ