丹比真人笠麿、紀伊国に往きて勢の山を越ゆる時作る歌一首
𣑥領巾(たくひれ)の 懸(か)けまく欲しき 妹が名を この勢の山に 懸けばいかにあらむ
萬葉集 巻3−285 丹比真人笠麿 (たじひのまひとかさまろ)
𣑥の領巾(ヒレ)を懸けるように口に懸けたい(口に出して言いたい)妹という名を、この勢(背)の山につけたらどうだろう。
* 楮 (コウゾ) クワ科の落葉低木
𣑥(たく)、妙(たえ)、木綿(ゆふ)などは、コウゾの繊維で織った布のことです。
「𣑥領巾の」はカケにかかる枕詞
𣑥領巾(たくひれ)とは、コウゾの繊維で織った白い布で作った丈の長い肩掛けで、当時の婦人の服飾のひとつ。今でいうストールみたいなものでしょうか?
過去に写したものの中から、領巾(ヒレ)を肩に掛けた女性の写真を探したら、少し見つかりました。
上の写真は明日香村の奈良県立万葉文化館で。
万葉文化館地下一階に、当時の「市」の賑わいを等身大の人形や絵で再現し、万葉人の暮らしを体感できる展示室「歌の広場」があります。
人の集まる賑やかな市の一角で踊りを見せる芸能者。見物する人々。そんな場面を何気なく記録した一枚ですが、良く見ると女性の踊り子が白いヒレを肩に掛けて踊っています。見物する女性は黄色に染めた領巾を。
左の写真は、奈良の猿沢池の辺りにある采女神社の「采女まつり」で采女風の衣装を纏った女性。留学生でしょうか。
ここに写った方の他にも国際色豊かな采女(うねめ)たちを見ました。
↓ 采女まつりの行列で、もちいどのセンター街を行くミス奈良。こちらは格別華やかな衣装です。
去年の6月、そこにコウゾの木があることを初めて知ってから、春に咲くという花をぜひ見たいと楽しみにしていたのに
いつの間にか忘れてしまいました。
先日、買い物に出て通りかかり、ふっと、そうだった!と思い出してコウゾの細い枝先に目を凝らすと
何やら小さな薄い色のモヤモヤしたものが見えました。あれがコウゾの花じゃないの?
次の日カメラを持って出直しました。望遠レンズで引き寄せると、図鑑で見た通り、変った形の儚げな花です。
とても地味な淡い色の花の直径は1センチ程、しかも伸び始めた葉に隠れるように咲いていて目立ちません。
これでは知らなければ見過ごして当然だわ。
下の写真の花色が肉眼で見た感じに近いです。もう少し淡い色だったかも。
その他 この日の収穫
ミツバアケビ
クリオネみたい♪