トラツグミ (ぬえ鳥)




よしゑやし 直(ただ)ならずとも ぬえ鳥の うら嘆(な)け居りと 告げむ子もがも



                               万葉集 巻10−2031   柿本人麻呂歌集



たとえ直に逢えなくても、「ぬえ鳥のようにひっそりと嘆いている」とあの人に伝えてくれる子がいたらなぁ。




  秋の雑歌 「七夕」の中の一首です。

   ぬえ鳥はウラ嘆ケにかかる枕詞。  トラツグミのこととするのが定説のようです。

   トラツグミ 〈スズメ目 ヒタキ科 ツグミ亜科〉  漂鳥または留鳥。 全長 約29㎝




先日、くりはま花の国の林の中の遊歩道を散策している時、向こうから来た男性に
「展望台の広場にトラツグミがいるよ」と声をかけられました。
「え? それって大きいですか? 私にも見分けらます?」と聞き返すと
トラツグミ見たことないの? 僕はもう百枚以上写してるけど、今日も沢山写したよ」
と、立派なカメラに納まったトラツグミの画像を見せて下さったのでした。
教えて頂いた広場に急いで行ってそぉ〜っと目を凝らして見回すと、それらしき鳥がチョコマカ動き回っています。
三羽ほどいたでしょうか・・・?
遠くてはっきりとは見えないので、適当にレンズを向けて取り敢えず写して拡大しますと
確かにさっき見せて頂いたトラツグミに違いありません。
私の持っているレンズでは、精一杯引き寄せても小さくしか写りませんが、帰ってパソコンに取り込んでトリミングして見ますと、
トラツグミツグミが一緒に写っていてビックリしました。 同じ仲間同士、仲良く暮らしているのかな?
トラツグミはぬえ鳥のこと、などと聞くと、平家物語で読んだ源頼政の鵺退治の話を連想して、何やら恐ろしげな鳥かと思いきや
円らな目の、動き回る様子も中々愛らしい鳥なのでした。
夜にヒョーヒョーと口笛を吹くように鳴くのだそうで、そんな鳴き声が昔の人には気味悪く感じられ
鵺などという妖怪の姿を想い描いたのかもしれません。



トラツグミツグミ
 




この日の緑地の花は、椿が少々。東京湾の展望が素晴らしいレストランの前庭に鉢植えのアイスチューリップが咲き残り
青空の下の早咲きの菜の花に春の気配を感じました。






久里浜港を出港する東京湾フェリー


途中で立ち寄った久里浜天神社にて