湯治




5年ぶりに訪れた増富温泉は、ほんの少し寂しさが漂うように感じました。
住民の高齢化による過疎化が進んだのか人影まばら。何となく活気がない。常連の湯治客も減っているのでしょう。
お盆の間はさすがに満室との事でしたが、それが過ぎればお客さんも少ないようでした。
私共がいつも泊まる津金楼は増富温泉郷の一番奥。緑濃く、前を流れる本谷川の瀬音がBGMの
それは静かな環境に建つ規模は中くらいの宿です。
二階から四階に客室があり、エレベーターは無いので、階段をエッチラコと上り下りしなければなりません。
案内された三階の部屋の様子は昔の儘、古びた壁の傷も見覚えがあるような・・・笑
お茶を淹れて下さる従業員さんも見覚えあり。随分お久しぶりなんじゃありませんか〜と云われました。


食事は朝夕お部屋食。豪華ではないけれど、地場野菜中心の心尽くしの手料理が並びます。
だだ今回、ご飯の炊き方が硬すぎると思いました。年老いて咀嚼力が弱ったのかな。
胃腸の術後の方は困るだろうな。頼めばお粥など用意してくれるのかな。また行くことがあったら頼んでみましょう。


一日目の夕食後に床を延べてくれますが、その後は万年床のお部屋が多いです。
どうも、それが湯治場の仕来りのようでして。
従って部屋の掃除はマメには行われず二日おき位。潔癖症の向きには耐えられない住環境かも。
もちろん頼めば毎日の布団の上げ下ろし掃除はやってくれるのでしょうけど。


温泉(冷泉)は放射能泉でラジュウム含有量が多いことから、癌に効く、と云う評判ですが、その真偽はともかく
豊かな自然の醸す気のようなものは感じるので、ここで体に優しい食事や散策、効能ありげな温泉入浴で数日を過ごすうちに
生活リズムも整い、自ずと免疫力、治癒力が高まる、なんて事はあるのかもしれません。


ラジュウム泉は鎮静、鎮痛作用があるそうで、湯治客には杖を頼りの足腰の痛む高齢者が多いですが
お口はまだまだ達者なので、長湯のつれづれに身の上話やグチ話など、大声で語り笑いさざめく人たちがいて退屈しません。
薬代を払う積もりで毎月通う人。娘さんに看護師さん並みのお手当てを支給して付き添って貰う人。
お医者さんだという娘さんの真っ赤な車で送迎され、のんびり滞在する人。
ひたすら穏やかに助け合いながら入浴を楽しむ老姉妹。
大阪の生活事情や美味しい食べ物をあれこれ紹介してくれる人。名物?「いか焼き」がとても美味しいのだとか。
小さな空間にも様々な人生が垣間見えて面白いです。
そんな中に大学生風のお嬢さんのグループが静かに輪になって湯浴みする姿が可愛らしい。
それに引き替え、オバちゃんたちは騒がしいなぁ。
男湯はというと、誰も彼もだんまり作戦。じっと目を閉じ、し〜んと静まり返っているそうです。



津金楼




二酸化炭素 ナトリウム 塩化物 炭酸水素塩泉
湯口から流れ出る源泉は透明で、口に含むと塩分が強く鉄臭いです。
鉄分が空気に触れると酸化して湯は茶色に濁り
含まれる炭酸の成分がサワサワした柔らかな肌触りで、凝りがほぐれるような感覚があります。




朝食  湯治プランで出された食事5泊分。


夕食



温泉成分が堆積した石灰華




増富温泉バス停



日帰り入浴施設 「増富の湯」




この地方独特の信仰でしょうか。どっしりとした石の祠に丸い石が祀られています。



花豆の花